鬼畜のススメ(村崎百郎)

おれは、村崎百郎が好きだ。だから、本書を買った。で、相変わらず面白い。なぜ殺されてしまったのだろうか。


本書のテーマは「ゴミ漁り」で、まあ、内容がかなりアレなのでそこの話は書きませんが、同じゴミ漁りを扱っていてもでも右の『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』のような洗練は全くない。というか、逆だな。姿勢が。村崎百郎のゴミ漁りは生きるためのものじゃない。


夜の街を徘徊しては、ただひたすらに「まだ使えるもの」や「エロ本、ビデオ」や「他人のプライバシー」を漁る。それだけ。


村崎百郎の文章って、確かに本っっっっ当にゲスな文体でひでえなって感じなんだけど、納得せざるをえないことも多くて、それで好きなんだよ。あ、好きだとか言っちゃったよ。でもいいや。好きなんだもん。私はゴミ漁りはやりませんけどね。


「引っ越しゴミの醍醐味は、捨てた人間の敗れた夢のかけらが見える瞬間である。俺はこれまでに多くの挫折した連中の引っ越しゴミを拾ってきた。膨大なテキストの山や夢を綴った情念ノート、…(中略)美術のアーチストを夢見ていたがかなえられず田舎に帰った奴のゴミ、…(中略)。実現する夢ばかりでないのがこの世の常である。」


「皆の衆も、一体自分がどれほどキレイなモンなのか暇なときにゆっくり考えてみろよ。人間なんて皮一枚下は血や脂肪や内臓のつまった糞袋じゃねえか。」


「かといって『俺に拾われるゴミは全て、この宇宙のはじまりからすでに、この時間と空間の中で俺に拾われることが定められていたんだ』などとご大層に『運命』を感じることもない。常識を超えた神秘的なモノやコトはそこらじゅうにいくらでもある。このゲスで下品な『ゴミ漁り』という行為の中にさえ…(中略)限りなく神秘的な現象が宿るというのは、この世がそもそもいいかげんなものだというよい証拠である。だからおれは金輪際、不思議なことを『神秘』なんていう偉そうな言葉で表現するのはやめてやる。」


文面は酷いが、言っていることはたまーに正しいよ。たまーにね。他の部分はまあひどいです。


この本からゴミの捨て方を学ぶのはおかしいとは思うが、実際漁られて困る情報は自分で燃やしちゃうか、ズタズタにして、収集日の朝に出すことが肝要だと分かる。サークルで作った名簿とかウィンドブレーカーとかTシャツとかは、知らない間に村崎百郎に漁られてたかもしれませんよー。私は前の日の夜からゴミを出したりはしないし、そもそも男だから漁っても大して面白くないけどね。


まあ、これが親とか親族とかつきあい始めの恋人とか大して親しくない人間とかには持ってることを知られたくない本であることは間違いない。


全然話は変わるが、村崎百郎がよく使う「○○はいいぜぇ、○○はよおおおおおお」って言い回しがあって、通常この「○○」にはアレな言葉が入るんだけど、常識的で良い言葉を入れると割と面白くなることが分かった。


「親孝行はいいぜぇ、親孝行はよおおおおお」


とか


献血はいいぜぇ、献血はよおおおお」


とか


「投票はいいぜぇ、投票はよおおお」


とか。