愛と幻想のファシズム(村上龍)

ようやく書きますよ。友人に是非読むように言われてから早10年以上。よくそこまでほったらかしにできたもんだねえ。


お話は。世界経済が再び恐慌に突入、中南米やヨーロッパ、アジアの国々が破産し、日本経済も疲弊。世界はアメリカの超多国籍企業コングロマリット、通称「ザ・セブン」によって牛耳られようとしていた。鈴原冬二は、日本を狩猟社会に戻すべく弱者を駆逐し、少数の人間によって国を動かすことを計画し、彼の元には有能な学者、官僚、テロリストが集まり・・・というもの。


読み終わってから1ヶ月くらい経ってるから、勿論結末はとっくに忘れているけど、面白かったよ。感想が漠然としとるのお。ああ、そうだ。今日の日記はあんまり本のストーリーについては(いつも以上に)触れないです。


私は、山形浩生の影響で、人間は別に全員が平等ではないと考えている(山形浩生が誰なのかについては、Googleさんに訊いてくださいね)。長くなるが、彼の著書の『新教養主義宣言』から引用しますと。


「実はぼくは、いま例としてあげたみたいな、機会のせいか資質のせいか運命のせいか、一般大衆レベルにとどまっている人なんか、ホントはどうでもいいのだ。テレビ眺めて(それすらわからないのでテロップ入れてもらって)トドみたいにゴロゴロしているのは、楽しいこともあるんだろう。かれらの感じている不幸ってのはたぶんそんなに大きなものではないんだろう。」


「だって一人一票とかいうけれど、あのバカの一票と、このおれの一票が同じ価値なわきゃないんだから。(略)選挙をタレント人気投票と勘違いして、今の某知事(略)みたいな連中を選んじゃうやつらに選挙権をくれてやっていいの?普通選挙制は間違ってると思う。安易すぎると思う。車の運転にすら、資格試験があるんだよ。なんで二十歳になったくらいで、ホイホイ気軽に選挙権をやっちゃうわけ?」


「民主主義は、今の日本人、いやそれどころか世界の先進・中進国すべての人間たちの政治思考を冒している疫病のようなものだ。みんな、一人一票の学級会民主主義だけが唯一無二の理想的政治形態だと信じ込んで、何の疑問もいだいていない。(略)だがもちろん民主主義にだってまちがえるし、ナチは政権をとってしまう。みんな、自分の手にした権力の大きさを自覚せず、その行使による利害をろくに考慮することもなく、適当にタレント候補に票を投じてしまうのだ。この惨状を見て、なぜ民主主義をそこまで信じられるのだろう。」


学校の先生が聞いたら憤死しそうな主張だ。しかし、全面的に賛成はしなくとも、少しは引っかかる内容ではないですか?あ、ないですか。それは残念。


作中、鈴原冬二との会食の最中に、大蔵官僚がこう言う。


「今の日本でも同じでしょ?勉強したくない奴が無理に高校なんかに行って非行に走るわけだから、あいつらは教育なんかしないで奴隷らしくこき使ってやればいいんですよ、教育ったって受け入れる頭がないんだから。」


山形浩生の言ってることと共通する点があるよね。


私は、山形浩生の提唱する「選挙権売買制度」を面白いと感じる。ここで全文が読めます→http://cruel.org/cut/cut199506.html


コレ、実際やったらもうちょっと日本はマシになるのではないかえ?あとは、政治家になるためにも資格がいることにするべきだな。前から疑問だったんだけど、何で官僚になるには試験に合格しないとなれないのに、政治家はバカでもなれるのかな?選挙が試験の代わりだってか?今の選挙なんて地盤、看板、鞄の通称三バンがあればどんなクズでも受かる代物だ。


お前はエリート主義者なのかと問われれば、イエスと答える。政治経済や内務外務は優秀な人たちがハンドルすればいいでしょ。私は高級官僚になれるほどの頭がそもそもないし、万々が一能力があっても大変そうだからそういう仕事はやりたくない。中程度の被支配階級に落ち着くのが望みです。


この小説の感想とは離れるが、私は天の邪鬼なので世の中ですんごい信じられていることをつい疑っちゃう。戦前戦中の日本は悪い国だった。ファシズムは最悪で民主主義は素晴らしいものだ。相撲の八百長は悪いことだ。芸能界とヤクザは付き合いをしてはいけない。んー。本当か?


そりゃ、一から十まで疑ってかかってたらキリがないが、疑う回路まで麻痺させる必要はない。と思うんだけど。


主観的面白さ:★★★★/5