『集中講義 これが哲学!』(西研)

去年、どの本を買った時だったか、一緒に買ったものをようやく読み終えた。正直、恥ずかしいタイトルだから買うのを少々ためらったんですけどもね。


どっかの大学だかカルチャーセンターだかで著者がやった講義をまとめた感じのもので、話し言葉がベースで書かれているので読みやすいのは読みやすい。一応哲学の歴史を概観して、これからの哲学はどうあるべきなのかについての著者の意見をまとめてある。


哲学なんぞ、細かく見ていけばドツボに嵌って一生迷子になってしまうものなので、この本くらいでちょうどいいのかも。アリストテレスからハイデガーまで、重要と思われる、私でも名前を知っている人たちの哲学のお話が書いてあります。


個人的にほー、と思った哲学者はホッブスですかね。何でも、社会契約論の基礎を作った人らしいんだけど、この人、ロックやルソーなんかと違って、民主主義を認めてなかったんだってさ。民主主義に懐疑の目を向ける私としては、グッときました。


分からなかったのはルソーの「一般意志」だな。私の頭が悪いせいだろう。しかし、これについては別に改めて勉強しようという気も起きないな。


フッサール現象学の話とかは面白かった。


ポストモダンの哲学に疑問を呈している点には好感が持てた。ってまあそれもこれも私がポストモダンの哲学の内容を全く理解できないからなんだけどね。デリダだとかラカンだとか、何か名前が強そうだなーくらいにしか知らねえし。ソーカル事件なんてのもあった。


あと、著者はかなり当然のごとく冒頭から「人の世界像(≒世界観)は物語のかたちをとっている」と言うのだが、これは今読んでいるピーター・サンデルの『これからの正義の話をしよう』では終盤にようやくちょっと話がでてくるのと対照的だ。


個人的な物語には肯定的な見方をする、というかそれがないと生きていけないくらいの書き方をしているにもかかわらず、著者は、個人が国家という枠組みに対して(個人に比べれば相対的に)大きな物語を感じることには否定的な見方をしているんだよねー。小林よしのりのことを名指しして批判しているところからもそこは分かる。まあ、私も小林よしのりの言うことに全面的に賛成ではないものの、かなり納得する部分もあるので、ふーん、というかお利口さんなのね、って感じがした。


全体的には面白かったです。ブックガイドもついてて、気が向いたら読んでみようかなと思ったよ。


主観的面白さ:★★★/5