衝撃の邂逅

ある意味では、大変に勉強になった一日だった。


ざっくりと端折って話すと、今日私はなぜかお客さんと焼肉屋で一緒に昼食を取ることになった。
構成は、お客さん夫妻とその子供二人、私の仕事の助手さんと私。で、そのお客さんの旦那が、「ザ・中小企業の社長」ともいうべき人間だったのだ。


私たちの頭の中には、特定の言葉や事柄に関する共通のイメージのようなものがあるはずだ。ない、と言われると話が先に進まないので、ここは是非ある、ということにしてほしい。例えば、「泥棒」と聞いて思い浮かぶのは、あのほっかむりをしてひげを口のまわりに生やし、盗んだ物を唐草模様の風呂敷に包んで、抜き足差し足で逃げる輩だ。


しかし、実際にはそんな泥棒はいない。だから我々がイメージする「中小企業の社長」が、本当にいるなどとは、普通は思わない。でも。いた。いたのよ。…と、書くとまるで「ツチノコを見た」と強弁するのび太のようだが、いたものはいたんである。


具体的にはこうだ。

・禿頭
・肥満
・高血圧
・心臓疾患持ち
・横柄
・独善的
・我がまま
・短気

どうだろうか?マジにいるんだよ、この全てを備えた奴が。



私はこのお客さんと会うのは2度目で、初めて事務所に来た時に高血圧かつ心臓疾患持ちであるということを知ったが(ニトロを持ち歩いていると話していたので)、横柄以下の属性については私にはそういう態度ではなかったので分からなかった。


そこからの、今日の会食である。まず、車で私の事務所近くまでお客さん一家が到着。パーキングに車を止める。「娘が焼肉が好きだから近くに焼肉屋はないか」と訊かれる。で、こっちは当然「昼から焼肉かよ」とは思ったが、おくびにも出さずに少し歩いたところにある焼肉屋に入った。席に着くなり、メニューを眺めて一人勝手に(!)頼む物を決めだす。


まあ、食えない物は特にないし、それはいいかと考えていた矢先。お客はおもむろに「生ビール二つ」と注文するではないか。いやいやいや。昼だし、おれ、仕事あるしさ。で、さすがにそれは断ってウーロン茶にしたのよ。


そんで、あんまりにも当然のように自分用にビール頼みだして、実際ごくごく飲んでるから、まあ、「奥さんが運転してきてんのかな」と思いますわいな。しかし、会話の途中でどうやら奥さんはそもそも免許持ってないことが発覚。


ぇえ!?と思ってすぐにその客の口に割り箸を突っ込み、ビールを吐かせた…わけはなく、どうにもならず。って仮に吐いても何の意味もないしな。私は同乗しないし、関係ねえやと居直ることにした。


そのお客の注文を聞いていた限り、私にはクッパが運ばれてくるもの思ってたが、なんか普通にカルビとかが運ばれてきて、しかもライスまで来ちゃったんで、更に驚く。なぜかは分からん。ああ、もうこれは野良犬に噛まれたと思ってこの場をやり過ごすしかねえと決心。


次々に勝手に私の皿(タレがなみなみと注がれている)にのせられる肉、肉、肉。私はただ今絶賛ダイエット中で、しかも昨晩痛飲しているため、カロリー大量摂取。おれの計画が崩れていく。恐ろしくて体重計に乗れねえよ。


結果、ご飯まるまる2膳分(因みに普段は一日でご飯を少なめに1膳しか食べてません)と肉たくさんを取らされる。ああ、タニマチに奢られる力士ってこんな感じなのかもな。


飯の後、私たちはぐったりとなってしまったのは言うまでもない。もう電池切れちゃったから家に帰りたかったけど、やらねえといかん仕事があったので何とかかんとか頑張りました。


いやー、中小企業の社長って、ほんっっとに素晴らしいものですね。