『東電OL殺人事件』(佐野眞一)

感想とかを書くやつが諸々溜まったから順番に書いていこう。


本書は、1997年に渋谷の円山町で起きた、所謂「東電OL殺人事件」についてのノンフィクション。著者は最近、確か「週刊現代」で孫正義の人物伝『あんぽん』を連載していた(る?)佐野眞一


事件は、当時非常にセンセーショナルに報じられた。というのも、今をときめく東京電力の初の女性総合職社員が渋谷で街娼をやっており、挙げ句円山町にて遺体で発見されたからだ。


容疑者とされるネパール人の男性は割と早い段階で逮捕された。んだが、裁判はすんなり進まなかった。というのも、このネパール人男性は一貫して容疑を否認しており、証拠を勘案しても極めてシロに近いという状況だったからだ。事実、2000年に出された東京地裁の判決では被告人は無罪となっている。事件についてのウィキはこちら↓

http://p.tl/oNWv


1997年と言えば、私が大学に入学した年だが、通学途中の電車内の中吊り広告で盛んに報じられていたのを横目に見たくらいで、特段の関心はなかった。何でかいな?


中村うさぎは自分が元バリキャリだったこともあるからなのか、『私という病』で随分と色々書いていたけど、例によって内容をほとんど覚えていない。すまん。ただ、街娼として本番をするところまでは行かずとも、自ら整形してデリヘル嬢として働くということをしている以上、並々ならぬ思いを抱いていることは分かる。


しかし生憎『私という病』が手元にないから、書けることはない。


被告人の有罪無罪の点は、この事件について本書しか読んでいないものの、件のネパール人男性は無罪だろうと思う。検察のシナリオには無理があると言わざるを得ない。実際にネパールに行くなど、著者の取材は綿密で、それに比べると検察のストーリーは稚拙すぎる。


今となっては「警察、検察は前もって事件にストーリーをつけて起訴・裁判する」というのは、あの村木元局長の事件で常識となってしまったわけだが、その「クロにするための執念」には驚かされる。被告の友人に、警察のストーリーを裏付けるような証言をすれば、ビザの面で便宜を図ってやるなどと甘言を弄していた、とかね。


読み物として、単純に面白いです。文庫になったのが地裁で無罪判決が出たタイミングだったので、それで終わりゃあ大団円だが、そうも行かないのが世の常。現在再審請求中。


些末なことかもしれないが、この佐野眞一さんって結構文学趣味なのか、湿っぽい表現がちょこちょこ出てくるのがちーと気になった。その後に読んだ同じ犯罪モノのノンフィクション『凶悪』がドライな感じだったから引き立ってしまったのかもしれないけど。


主観的面白さ:★★★★★/5